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4. 水切り遊びの研究
【返信元】 3. 水切り事初め
2014年07月29日 05:29
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インターネットで情報を探していたある日、興味深い大学の研究が見つかりました。CIP法による跳飛現象の数値シュミレーションというものです。これは、水切り現象の流体力学的考察ですから、計算式の山です。最後に「概ね定性的な一致が見られるが、実験結果では波に3次元性がある点や、速度変化量にも違いが確認できている。これについては今後の3次元解析にて明らかにしたい」とありました。計算式はわかりませんが、発表されている写真と図解はわかりやすく、いくつかのことがわかりました。同時にこの研究は私個人では到底無理だと感じました。
知り合いの工学博士に話してみたところ、これを計算するには、複雑なことなので、なるべく単純にして変数を少なくして求めるのだそうです。例えば水面は平面で、風は無くて、石の形状は円で…。というふうに。そうした中で変数を系統的に変えてゆき、現実的な条件を徐々に当てはめてゆくのだそうです。博士はこう続けました。「それより、あなたの感性で研究する方が良いのでは?…」人の感性は、計算はできなくても的確だと言う訳です。そのとおりかも知れません。沢山の筋肉と自然が複雑に関係する水切り現象は、感覚の係わる部分が大きいということです。つまり、水切り遊びのように複雑な現象は、科学で解明するより、遊びとして感性で理解する方が良いということでしょう。世界は複雑です。実際、すべてを科学的に理解することなど不可能です。考えてみれば、私たちは感性で理解し、判断していることの方が圧倒的に多いのです。 水切りの研究で難しいのは、同じ石や水面を確保するのが困難ということです。まして、石をまったく同じに投げるのは至難の技です。石を投げる機械や大きなプールを作るのも経済的にも困難です。初めに練習しなければならないのは正確に投げることでした。 正確に投げる練習を始めると次々に発見があり、ジャンプの回数も増えてゆきました。これほど面白いのに水切りの資料が少ないのが不思議でした。 実技だけでなく、水切りについての様々な事柄も調べてゆきました。世界の水切り遊びについてや子どもの遊びについてなどです。呼び名については、水切りから、石切り、石投げ、跳ね石、水面石飛ばしが一般的なようでした。埼玉県の荒川水系だけでも10種の呼び方がありました。ちょんぎり、ちょんべ、ちょっきり、けんけん、ちょっぴん、みずくぐし、ちょうま、みずすまし、ちょうめん、そして水切りです。埼玉では、ちょんという、何かが軽く物に触れる様子を表した呼び名が多いようです。他県でも多くの呼び方がありました。沖縄では、地域に根ざした面白い呼び名もありました。跳びハゼをトントンミーというらしいのですが、その魚が干潟を跳ねる様子が水切りのようなので。水切りをトントンミーと言うのだそうです。 いずれにしても、これほど呼び名が多いと言うことは、水切り遊びは限られた場所でしかできないため、特定の仲間だけの遊びになり、横のつながりがなかったという事だと思われます。文献も残らない筈です。そして、道具も必要ありませんから何も残りません。石は水底に沈み、どんなに美しい波紋もすぐに消えてしまいます。 続く… |
3. 水切り事初め
【返信元】 2. 水切り遊を知っていますか
2014年07月28日 07:23
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私は長く写真を趣味としていました。草や昆虫、きのこなどを撮影していましたが、それは自然そのものへの興味へと移り、環境保護団体への入会へとつながりました。
私が55歳の時です。県の企画で、学年の違う子どもたちが公民館に一週間泊まり込み、そこから学校に通うという企画がありました。目的は、群れて遊ぶ事が少なくなった子どもたちが、共に暮らすことで、どんな効果があるかという、いわばガキ大将文化の再構築実験だと思われます。私はその企画に関わることになりました。環境保護団体に属していて川遊びの地図などを仲間と作っていたことから、川に詳しいということで、川遊びのガキ大将役を引き受けることになったのです。 実際に遊んでみてわかったことは、子どもたちが川の遊びを知らないということです。擦ると赤い火花のでる石(石英)のことも、干上がった貯まり水の跡にどじょうなどが居ることも知らないのです。水切り遊びをしてみせると、10回位のジャンプなのに、ワーと歓声が上がるのには驚きました。男の子は「スゲー」女の子は「ウッソー」という具合です。昔はこの地域の子どもには当然の技だったのです。この技で私は子どもたちにガキ大将として認めてもらえました。「これは何かに使えそうだ」と直感しました。子どもと遊ぶのが好きな私は、これを契機にあらためて水きり遊びの練習を始めたのです。 私の住む地域には荒川という水切りに適した川があります。静かで広い水面や、石も多く、比較的安全です。稀に見る水切り遊びに適した川だということに気付くのに55年かかったことになります。あまり近すぎて気付かなかったのです。その宝とも思われる環境は十分に活用されているとは言えません。休日に河原で遊ぶ子どもの姿は稀にしか見られません。水辺の楽しさを知るきっかけに水切り遊びが役立のではないかと考えたのです。 子どもたちと遊んでみて気付いたことがあります。たくさんの子どもたちと遊ぶ機会がなく、単純に子どもは昔と変わらないと思っていたのですが、そうではありませんでした。 まず、物を上手に投げることのできない子がたくさんいます。拾った石を自分で投げないで「おじちゃん投げて」と抱えてくる子がいるのには驚きました。自分で投げるより効率的だと思ったのでしょうか?。さらに、小学高学年の女の子には投げようとしない子もいます。自分が上手に投げられないと思うのか、初めから「意味ないジャン」という感じです。また、拾った石をそのつど「この石はどう」と聞きにくる子もいます。年令のわりに危険に対する感性がおかしいと思う子もいます。小さな子はしかたないと思うのですが、隣の子との間隔をとらないで投げたり、岸から離れた位置から投げ、前の石に当たって跳ね返ったり、前に人がいるのに後ろから投げたりしています。「ちょっと待ったー」私は叫びます。たかが水切り遊びでもしっかり教えなければならないと痛感しました。それでもほとんどの子は嬉々として遊んでいます。本来、子どもは野性に近い感性なのです。 子どもは私の周りに自然に集まります。こんな経験はないので、どうしたら良いのかわかりません。ガキ大将役も難しいものです。水切りについても、どう教えたら良いのかわからないこともありました。 子どもたちとさよならをした後、早速インターネットで水切りについて調べてみましたが、情報はほとんどありませんでした。キャンプで水切りをして楽しかったとか、川遊びの一つとして紹介されているものしかありません。これはとても意外なことでした。 その後も色々と調べてみましたが、水きり遊びについての古い情報はほとんどありませんでした。これほど知られている遊びにもかかわらず、書籍も、歌も、昔話もほんの僅かしか見つかりません。川の流れや夜空の星に物語があるように、水きり遊びにも素敵な物語りがあると思っていましたが、不思議です。続く… |
2. 水切り遊を知っていますか
【返信元】 1. 水切り遊びのまとめ
2014年07月27日 13:03
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遠い水源の山から長い旅をして来た石は、水流に撫でられ、平たい石になりました。人はそれを拾い、水面に投げて楽しみます。投げられた石は生き物のように水面を跳ね、波紋を残します。良い条件で見る水切りの波紋は実に美しいものです。
人は鳥のように飛べません。魚のように泳げません。馬のように走れません。でも、何かを投げるのは得意です。この投げる能力は自己の拡大を意味し、やがて弓矢へと発展したでしょう。そう考えると、この投げる能力が人類の文化や精神に与えた影響は小さくないと感じます。水切り遊びは離れた地点に変化を生じさせることに喜びを見いだした人類だけの遊びです。 子どもに限らず、人は楽しい事が大好きです。全力で楽しい事を探します。そして、それが生きる力の本質だと思います。 しかし、今では水切りのできる川も少なくなってしまいました。ダムができ、護岸された多くの川は石にヘドロが張り付き、川の生物も減少しています。水辺に立ち、水底の石や水の濁りを除いて見ましょう。昆虫や魚にも目を向けましょう。水辺には自然の不思議がいっぱいです。 今、文明は自然から学び直そうとしています。水切り遊びは自然を見直す一つのきっかけになるかも知れません。川は都市の近くにあり、多くの自然が残っている貴重な場所でした。水辺は私たちのかけがえのない遊び場です。 埼玉県熊谷市を流れる荒川は、私が子どもの頃の遊び場でした。そこには魚がたくさんいて、いつでも捕ることができました。水面の下の大物を想像し、釣り方などを工夫したものです。そこは私たちの夢や想像力を育み、感性を育てる場所でした。今そこに子どもの姿は稀です。 すべての条件が揃った水切りは美しい波紋を残します。それに気付いたのは、水切りを始めて四十年も後のことになりました。本当にきれいな水切りの波紋を目にしたことがなかったのです。子ども時代は、ただ、たくさんのジャンプが見たいだけで石を投げていました。 波紋は僅かの波で、水は透明です。波紋は光の屈折や反射を通じて見ることになります。また、水切りの美は波紋の動きの規則性にもあります。それらを見ることのできる最適な条件は多くありません。 風や流れで波がある場合、美しい波紋は見られません。鏡のように静かな水面が美しい波紋を見る基本です。明るい空の映った水面に起る水切りの波紋は、光の屈折で水底の暗さや影を映し、黒い波紋を見ることができます。橋の下などで行うと、さらに黒さの際立った波紋を見ることができます。水が濁っている場合はうまく見えません。木などが映って黒くなった水面では、反対に光源を反影して白く光ります。高い位置から見ると本来の丸い波紋が見え、その広がりが良くわかります。いずれにしても、波紋は光の反射や屈折で何かをゆがめることで見えるのです。 自分で投げた水切りの波紋は見る場所が限定されてしまいます。私が見た最も美しい波紋は、夕焼けで染まる雲を映した鏡のような水面にできた波紋です。波紋は、黒、赤、黄色、白、そして空の青とを歪め、何色もの丸い波紋になりました。規則正しく並んだ波紋は二十回を超えて水面を走ります。波紋は次々に広がり、先きに行くほど小さくなり、間隔が詰ります。何色もの波紋は生き物のようにうごめきながら円を描き、順番に従って広がり、順番に消え、やがて、川は何ごともなかったようにゆったりと流れます。この規則性と偶然の妙が水切りの美です。水切りに限らず、美しいことを美しいと感じる感性を次世代に伝えることは、大人の最も大切な仕事だと思います。 初めは隠れるように練習していましたが、どうせ練習するなら、見てもらう方が楽しいと考え、ある時期から練習を橋の下で行うようになりました。そこには良い水面があり、橋の上を通る人に見てもらえます。ある日、橋を通りかかった高校生の集団に喝采を浴びました。子どもたちが異常に喜びます。「おじさんもう一回投げてよ、スゲー、きれい」と大喜びです。その時は気付きませんでしたが、夕焼けの雲が水面に映り、最高の条件が揃っていました。仲間と見る美しい自然現象には不思議な感動があるものです。 水切りには意外な美しさもあります。水切り石が水面と接する時しぶきが上がります。それは投げられた石よりも速く、小さな水滴となり、激しく前面に飛び出します。そのスピードは異常に早く、現在の流体力学でも説明できないそうです。そのしぶきに虹が出るのです。もちろん太陽を背に投げなければなりません。石は大きめのものを使います。石が水面を跳ねた数だけの虹が連続して発生し、瞬時に消えます。また、夜光虫の海で水切りをすると不思議な波紋が見られると聞きました。ぜひ見たいものです さらに、石が水を切る時に出る音を楽しむこともできます。水面に接する部分に鋭利な凹凸のある大きめの石は、水面に接すると空気が入り、水を切る音を大きくします。石が笑っているような音がするので、天使の笑い声という名前をつけてくれた友人がいます。少しオーバーかも知れませんが、素敵な呼び名だと思います。 また、水切りには色々な技があります。たとえばムカデ、海老、八艘飛びなどです。ムカデは石を真直ぐにジャンプさせること。海老は横にカーブさせてジャンプさせること。八艘飛びはジャンプさせた石を対岸まで飛ばす事です。名前からもわかるように、かなり昔からある技のようです。さらに、両手で投げたり、股の間から後ろに投げたり、寝転んで投げることもできます。高いジャンプをさせたり、小さな石を連続して投げたり、数個の石を一度に投げてジャンプさせることも可能です。また、ジャンプさせた石をバケツなどの目標物に当てるのも面白いでしょう。数人でチームを組み、様々な技を組み合わせた演技ができたらさらに楽しいはずです。このように、水切り遊びにはたくさんの楽しみ方があり、水辺の暇つぶしだけではない面もあるのです。それらを発見し、大いに楽しんでもらいたいと思います。また、新しい技を考えるのも楽しい事です。時々とんでもないことも思い付きます。その中に煙りを残してジャンプする「隕石」というのがあります。石に煙りの出る花火を貼り付け、火をつけて投げると煙りを出しながらジャンプします。それだけでも面白いのですが、石が沈んでからも水面からブクブク、モクモクと煙りが出てきます。それが間抜けな感じで実に面白いのです。でも、環境を大切にする水切り遊びにはふさわしくありません。これは封印です。もう一つは、キック投げです。足で石を挟み、回し蹴りのようにして投げるとジャンプさせることができます。かなり難しいですが、石は少し楕円形のものを使い、石の半分を挟み、遠心力で石に回転を与えます。しかし、この技も自然に対する感謝の気持ちが感じられません。これも封印です。 水切り現象には謎が多く、現在でも大学などで研究されています。ときどき私にも問い合せがくることがあります。科学的な興味も尽きませんが、水切りは感性の遊びです。私たちは科学万能のような生活をしていますが、自然の不思議は科学的に開明しきれていません。それらの謎を私達は野生の知恵ともいうべき感性で理解します。謎の多い水切り現象ですが、繰り返し体験することで、私たちの感性はそれを理解するのです。続く… |
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